メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

【重要】商品価格の新消費税対応につきまして

人権・校閲

こつこつコウエツ

「慚愧に堪えない」使える場面?

◆慣用句は適材適所で

 ことわざなど慣用句のたぐいは、状況をわかりやすく表すのに効果的なときもありますが、落とし穴もあります。

 野党時代に国会質問の通告を遅らせて与党や官僚を困らせていた菅直人首相が、首相になって与野党に早めの通告を呼びかけていることについて、ある原稿で「禍福はあざなえる縄」と表現していました。このことばは「この世の幸不幸は、より合わせた縄のように常に入れかわりながら変転するので、一時の幸不幸に一喜一憂すべきでない」という意味。現状はたしかに「不幸」かもしれませんが、野党時代の状況はたまたまめぐってきたものというよりも、自分の意思や行為がもたらしたもの。違和感をおぼえて問い合わせたところ、別の表現に書き換えられました。    

 別の原稿では、刺殺された弁護士が所属していた弁護士会のコメントとして、「○○弁護士を失い、慚愧(ざんき)の念に堪えない」としていました。「慚愧の念に堪えない」は、陳謝したり残念がったりする場で使われることがありますが、「慚愧」の意味は、ただ残念なだけでなく「恥じ入る」こと。自分の側に非があっての痛恨事というニュアンスがあります。コメントの引用であっても、用法が間違っていたら校閲としては指摘せざるを得ません。結局「○○弁護士を失い、残念でならない」と直りました。

 その慣用句は、ほんとうにその状況をなぞらえるのにふさわしいことばなのか、必ず辞書を引いて確認することを忘れずにしたいと思います。

◆数字の意味は

 企業の国際特許出願数のランキングについて書かれた原稿で、2位になった中国の企業が前年の順位である「20位から急浮上」したというくだり。調査機関のサイトを見ると、今年の順位の隣のPOSITION CHANGEDという欄に、「2」や「20」の数字が入っていました。原稿でとりあげた企業はその数字が「20」でしたが、これは前年順位ではなく、前年から20ランク上がったという意味でした。指摘すると、「22位から急浮上」となりました。

 テニスの全豪オープンの原稿では「相手の15度のサービスゲームを8度ブレーク」としていたのが、「15度のブレークポイントを8度ものにし」と、指摘で直ったこともありました。大会公式サイトの試合データを集めたページを見ると、Break Point Conversions が15分の8となっていたのですが、これは「相手のサービスゲームをいくつブレークしたか」ではなく「握ったブレークポイントのうち、いくつものにできたか」を意味していたのです。

 原稿の数字を裏付けるデータはどこにあるのか、さがしあてた資料の数字は原稿の数字が意味しているものと一致するのか、ときには外国語の表と格闘しながら確かめています。

◆載るのはいつ?

 インターネットのニュースサイトと違い、紙の新聞には載せられる記事の量に限りがあります。急に重要なニュースが入ってきたりしてその日に載せられなかった原稿もあります。そのうち、出稿当日でなくても掲載が可能なものは、保管しておき、後日使うことがあります。

 そこで気をつけたいのが執筆時から掲載時までの時の流れ。事態が変わっていれば、原稿はそのまま使えず、直さなければいけません。スポーツ大会の原稿の中で「実施する」としていた講習会が、保管している間に終了していたり、「共同購入サイトで紹介されている」としていた陶芸教室が掲載前に確認するとサイトから消えていたり、「検討中」と書かれていたイベントの開催が決定していたり。せっかくの情報も古いままでは役に立つどころか読者に間違った情報を提供し、混乱をきたしかねません。校閲記者はその原稿がいつ書かれたのか、いつ載るのかを常に意識し、最新の状況確認が欠かせないのです。